○オープニングフェイズ・シーン1
GM:まずは“外郭の街”シャンパーの領主邸にて、レンハさんとアールゥさんのシーンから。
レンハ:応。
アールゥ:はい。
GM:エグベルト王の崩御から三ヶ月……国を挙げての葬儀に参列したお二人とルカ=ディエンは、その後すぐ、他の地方領主たちと同様に王都を発ち、二ヶ月近く前にゴート地方へと帰還しています。
レンハ:しばらくは慌ただしい日々が続きそうだが。
GM:なお、エグベルト王の死についてはモルグインの報復によるものとして公表されています。組織との繋がりがあったとされるアーデンガード公爵家も廃絶、王家とモルグインの関係は闇へと葬られました。
GM:まあ、王都のごたごたはさておき……シャンパーに戻ってからはそれぞれ、新領主として政務に励み、給仕長として家事をこなすなど、忙しくはあるかもしれませんが、穏やかすぎる日常を送ることができています。
アールゥ:まあ……この50年間とかわらず働いてます。
GM:その日もレンハさんは務めを終えて、領主の屋敷へと帰ってきました。傍らには、相談役を務めてくれているルカ=ディエンの姿もあります。
アールゥ:「お帰りなさいませ、レンハ様、ディエン様」と出迎えます。
ルカ=ディエン:「うむ。」
アールゥ:ちなみに領主になられたので「殿」→「様」に変わってます
GM:いい小技ですね
ワッカ:芸コマだなメイド……
ワッカ:……主人から夫になった場合何て言えば……
GM:ダーリン
セラ:だり~ん
ワッカ:「ダーリン浮気はだめだっちゃ!」(サンダーストーム)
ルカ=ディエン:「レンハよ、だいぶ領主が板についてきたのではないか。遠からず、儂が補佐に付く必要もなくなるだろう。」
レンハ:「有難きお言葉です。」
レンハ:(色々とスルー)
ルカ=ディエン:「ともあれ、まずは食事にしよう。アールゥ、支度を。」
アールゥ:「かしこまりました。ご用意はすでに整っております。」
GM:おお。では食堂の長テーブルには、アールゥさんの指示の下、何枚もの食器が並べられていました。
ワッカ:(ぱんぱん)←てを叩く「あーるぅあーるぅ」とチビアールゥが給仕を……
GM:ビットだか子機だか量産機だか知りませんが面妖な
アールゥ:今週のびっくりどっきりメカ~
GM:お、おしおきだべー!?
レンハ:屋敷の日常的風景である
GM:王都から帰って以来、伯爵位の継承に伴って、席の上座にはレンハさんが座るようになりました。角を挟んで左隣、元はレンハさんの席だった場所にルカ=ディエンが着きます。
GM:そして、レンハさんから角を挟んで右隣にあたる席は、ぽっかりと空いています。
レンハ:ふむ……
ルカ=ディエン:「……あの方も、今頃は大変であろうな。」 空席に目をやって、ぽつりと漏らします。
GM:……数ヶ月前までそこには、勇ましくも麗しい姫君の姿がありました。
セラ:平然とそこに座ってがつがつ食べ始める
ワッカ:二本並んだ歯ブラシも一本捨てないといけないんですよ! 椅子ごとすてるしか!
GM:シーンの雰囲気もへったくれもねえや
レンハ:なんと言うべきか。果たして己の選択でよかったのか、しばしば自問しているかもしれない。
ワッカ:「レンハ……」「レンハ!」「レンハ」まぶたを閉じればあの頃の君が……
GM:姫君のその後の活動については、辺境にも情報が届いています。
ホロ:姫様も大変ですね。
GM:新王シャルルの後見人となった“クリスティアナ”が初めに着手したのは、前王が兼任していた白竜・幻竜両騎士団長を、適当な人材に割り振ることでした。
GM:両騎士団は王国が誇る防衛力、ひいては治安維持力の要。その長の座は、わずかにも空けておいていいものではありません。
GM:白竜騎士団長には、王都守備隊長を務めるユリウス・フォーミダブルを。そして幻竜騎士団長には“クリスティアナ”自らが就任しましたが、これには裏があります。
GM:問題です。その裏とはなんでしょう?
セラ:実は私がクリスに変身して騎士団長をやってる
アールゥ:いざというときに好きに動かせる事ができる戦力として?
GM:まともな回答は弱調にせんでよろしい。(笑)
アールゥ:失礼(笑)
セラ:そっかごめんね。
ワッカ:うぉい(笑)
レンハ:はて……。権力を握るという意味か、自身の保安のためか?
GM:レンハさんが一番惜しかったですね。
GM:実は幻竜騎士団という組織は、事実上の特殊部隊と呼んでもいいその性質もあって、独立した司法権を所持しています。そして騎士団の中には、三ヶ月前のあの日、宮殿でレンハさんたちの姿を見た者もいます。
レンハ:……なるほど。
アールゥ:情報が漏洩しないよう自ら統制するためですか
GM:はい。手綱を握り、事件の真相……ひいてはレンハさんたちを追及する動きを抑え込むため、クリスティアナは彼らに直接命令を下せる立場についたというわけです。
ルカ=ディエン:もちろんこの人も、その辺の事情は把握しています。
ルカ=ディエン:「三ヶ月もあれば、表面上は落ち着いたかもしれぬ。王位継承に際しての儀式も、そろそろ行なわれることであろう。」
レンハ:事実上はクリス、いやクリスティアナが権を握ることになる訳だし、王位継承に際してもやはり不安の種があるということか。
GM:いわゆる摂政ですね。グラスウェルズにその制度があるのかはわかりませんが。
ルカ=ディエン:「本来であれば、新王が自ら竜輝石を携えて“名もなき古の神殿”に詣でるが……シャルル様はまだ幼い。恐らくはクリスティアナ様が代王として向かわれることになろう。」
ルカ=ディエン:「何しろ、王が“純白竜”アインの加護を授かるための重要な儀式だ、欠かすことはできまいて。」
レンハ:「“名もなき古の神殿”、ですか。」 知らないということでいいのかな。
GM:噂くらいは聞いたことがあるかもしれませんね。何せ秘匿された聖域なので。
GM:同時に二人の脳裏に、三ヶ月前に見せつけられた、純白竜の加護の力がよぎるかもしれません。
レンハ:ふむ。“純白竜”アインの加護と聞いて、少し思うところがあるかもしれない。(かぶった)
レンハ:果たして“純白竜”の意志とはなんなのだろうな……。
アールゥ:…………
GM:一介の騎士……もとい、一介の伯爵であるあなたには、到底窺い知ることはできないでしょう。
GM:というところで、レンハさんは“純白竜”アインに、アールゥさんはレンハさんにコネクションを結んでもらってシーンを終了しましょう。
アールゥ:当然、主人です
レンハ:なんだろうな。王の一件で、一端の信仰心に揺らぐものがあるかもしれないが……とりあえず、信仰という意味であこがれかな。
GM:了解しました。では、次のシーンに。
○オープニング・シーン2
GM:続いては“白竜の都”ベルクシーレの宮殿にて、ホロさんとセラさんのシーンです。
ワッカ:「二人っきりだね……」
GM:二人と一匹がどうしたって?
ワッカ:鳩のこと?
GM:それは一羽だしどこ見てもいないし
GM:エグベルト王の崩御から三ヶ月……二人は“クリスティアナ”からの要請を受けて、王都に留め置かれていました。
GM:とはいえ、何か仕事を与えられていたというわけではありません。時折宮殿に招かれては、姫君の気晴らしに付き合わされていたくらいです。
クリス(ワッカ):「ほろ~! 新しい技考えたの~! 実験台……じゃない相手になって~?」
セラ:その間私は八層に取った宿で暮らしていたのでした。めでたしめでたし。
ワッカ:こっちは騎士団のバラックですかね、というかセラもそうでしょうがっ。
GM:でぃ、ディエン邸でよければ使わせてもらえますよ……?(笑)
セラ:タダで?(そこ)
ワッカ:ただだよ。たぶん。
アールゥ:一泊10Gです
ワッカ:DQか
セラ:地味ーっ
GM:貴族が平民からお金は取れません。あとセラさんは残念ながら騎士団の寮には……(目をそらす)
アールゥ:貴族でなくただのメイドです(ぁ
GM:宿泊事情はさておいて、その日も二人は宮殿に召し出され、麗しくも勇ましい姫君とのお茶会に参加しています。
GM:姫君は二人に紅茶を勧め、自らも優雅な手つきでティーカップに口をつけます。
ティアナ:「今日の茶葉は、南のウィンフィールド地方から取り寄せたものなの。お口に合ったかしら?」
ホロ:「ありがとうございます……すごく……美味しいです」
ワッカ:「む~」(面白くない)
セラ:「うん、おいしい」 味の違いなんて分からないけど。平民らしく。(えっ)
ワッカ:「セラのせいだセラのせいだ」と、床に「セラ祝ってやる祝ってやる」と落書き
ティアナ:「そう、よかったわ。クリスは、ウォールド山で採れる珈琲の方を好んでいるのだけれど……いくら目が冴えるとはいえ、私は苦くて駄目ね。」
ホロ:「かわいらしいですね」
ホロ:あ、砂糖は3つください
ティアナ:「まあ、ホロったら。私ももう二十歳なのよ?」 くすくすと嬉しそうに笑います。褒められたことよりも、こうして気さくに話せるのが嬉しいようです。
セラ:「それよりお酒はまだかな」
GM:え、何ブランデー? ブランデー入れる?
ワッカ:このふりょうきじゅつしがー!(笑)
セラ:私だってもう22歳だよ!
ワッカ:何がなんだか…………
レンハ:なぜかセラ君が現代の大学生チックな雰囲気で脳内再生される
ワッカ:山姥セラ
GM:ところで、クリスの姿はその場にはありません。普段ならこのお茶会は、二人の姫君が羽を伸ばせる数少ない機会なのですが……
ホロ:「クリス様は……?」
ティアナ:「ああ……“クリスティアナ”は今、シャルル王の代理として、名もなき古の神殿というところに行っているの。」
ティアナ:「そういうことだから、残念だけれど、今日はセラの奇術はなしね。ここには“クリスティアナ”の事情を知る人も多いけれど、わざわざ人の目を集めることはしたくないの。」
ホロ:「そうですか……」
GM:暗殺組織モルグインこそ壊滅しましたが、宮殿は未だ陰謀渦巻く世界です。再び“クリスティアナ”を演じることになった二人で一人の姫君は、お互いの足りない部分を補いながら、代王の務めを果たしています。
セラ:「あら残念。今日はとっておきを用意してあったんだけどなぁ」
ワッカ:「なになに? 人間ロケット?」
ワッカ:「さらにその上を行く人間地雷?」
セラ:妖精切断ショー等
ワッカ:ぎゃー
セラ:「やってあげようか?」 くすくす笑いつつも目が笑ってるかどうかは想像にお任せします。
ティアナ:相変わらずの一人と一匹のやりとりに、くすくすと笑みを漏らします。
ティアナ:「そういえばこの間、白竜神殿に行ったとき、セラの奇術が街の噂になっているのを聞いたわ。」
ワッカ:ずいぶん姫様が身近に感じられた
ティアナ:「……セラは、この都に落ち着くつもりはないかしら?」
セラ:それなら王になってるよ
GM:!?
ワッカ:やっぱりセラが王になるべきだった、そしてそれを……
セラ:「んー。今のところは考えてないなぁ。」
ティアナ:「そう、なの……」 残念そうな顔になります。
ティアナ(ワッカ):「セラが男の人なら……ううん、聞かなかったことにして……」的な展開
ティアナ:「セラが幻竜騎士になってくれれば、クリスも私ももう少し安心できるのだけれどね。いつか、その気になったら……」
ホロ:「セラさんがいてくれた方が心強いですよね」
セラ:「それなら私よりも適任がいるでしょう?」 と思ったけどホロくんはもうそれぐらいの位置なんだっけ。
ホロ:いやいや僕は王に……(お前もか)
ティアナ:「もう、ホロも白竜騎士じゃなくて……あら?」
GM:と、歓談している三人の下へと、伝令らしき軽装の騎士が急いだ様子でやってきます。
セラ:そして騎士が人間ロケットとなって飛んでいく
ティアナ:カップをソーサーに置いて、目前で跪く騎士に向き直ります。 「何事かしら?」
伝令:「は。……失礼ながら、ティアナ様にのみお伝えすべき事柄かと。」
GM:伝令はホロさんとセラさんをちらりと見ます。視線をなぞったティアナも一つ頷いて、
ティアナ:「わかりました。ごめんなさい、二人とも。少し外してくれるかしら?」
ホロ:すっと立ち上がりましょうか。
ホロ:「はい、ではこれで失礼します」と頭を下げて退場します。
セラ:「悲しい平民の宿命ね」 立ち上がってどっかいこう。
ワッカ:テーブルの下に……
GM:では、二人が会話の聞こえない場所まで遠ざかったのを確認してから……
GM:伝令がティアナの耳に何事かを囁くと、ティアナは表情を一変させて、伝令に何かを問いただします。その返答を受けたティアナは、しばし瞑目し……
ティアナ:「ありがとう、もう下がっていいわ。……ホロ、セラ! 二人ともこちらへ!」 慌てた様子で、伝令と入れ違いに二人を呼び戻します。
ホロ:何か不穏な空気が流れているので慌てて駆け寄ります。
セラ:「もういいの? 早いものね」 のんびり。
ホロ:「なにか有りましたか?」
ワッカ:ちなみにセラの上にいます
ティアナ:「大変なことになったわ。急ぎ、ゴートのレンハ伯をお呼びしないと。」
ティアナ:「伝令用の早馬はこちらで用意するから、例の“抜け道”を使って秘密裏に……」
GM:ティアナは焦った様子で、次から次へと細かい指示を出します。
ワッカ:セラの上で恋占いをしてます、セラの髪の毛抜きながら……
セラ:覚えるのはホロくんに任せる構え
セラ:あと妖精にはクリスタルブレイドを刺しておきます
GM:使い捨てーっ!
ワッカ:ぎゃーっす
ワッカ:わたしがなにしたっての!
ホロ:あの抜け道?
GM:あの抜け道。通常一か月半はかかるゴートへの旅路を、十日以内に短縮する魔法の抜け道。
ワッカ:「おめでたいことじゃ……なさそーだねー」
ティアナ:「アニマルメッセンジャーの鳥を飛ばした方が早いのでしょうけれど、山脈を越えるのは確実性に欠けるし……あなたたちに頼むしかないの。」
GM:ちなみにここベルクシーレとゴート地方を遮るジョール山脈の頂上には、強力な竜が多数生息しています。
ホロ:「わかりました」
セラ:報酬は?
GM:スイス銀行に
ワッカ:あんた騎士でしょ!
セラ:えっ
ワッカ:「騎士というのは仕えている……え?」
GM:セラさんは所詮傭兵騎士ですから。(所詮て)
ワッカ:なんだ写るんですか
セラ:しかも勲章売る気満々。(おい)
GM:はははこの野郎。それはともかく、二人ともゴートまで歩いて(走って)レンハさんを呼びに行くということでいいですか?
セラ:くす、と笑ってから 「いいよ。久々に向こうにも行ってみたいし」
セラ:「しょうがないにゃあ……。いいよ。」
ワッカ:このツンデレさんめー!
ワッカ:……最初はその気じゃないように見せて、でも最後には好意的な方が評価が上がる……?
ティアナ:「あっ……ごめんなさい、肝心の要件を伝え損ねるところだったわね。」
ティアナ:「出来うる限り一刻も早く、レンハ様にお伝えしてほしいの。クリスの身に起きた一大事を――」
GM:というわけで、二人が詳しい事情を聞かされ出すところで、シーンを終了しましょう。
セラ:ていうかホロくん。人形は持っていないんだっけ?
GM:あっ気づいた
ワッカ:あるよ。
セラ:事件解決!
ワッカ:電池ぎれ……
アールゥ:おかけになった電話番号は現在使われておりません
GM:ふふふ。それはさておき……
GM:最後に、ホロさんはティアナ・グラスウェルズに、セラさんは“白竜王国”グラスウェルズに、それぞれコネクションを結んでください。
ワッカ:忠誠?
GM:人、それを「主人」と呼ぶ。
ワッカ:「宿敵(とも)」(またか)
アールゥ:愛人で(略)
ワッカ:恋慕?
ホロ:憧れ?
ホロ:「主人」で。
セラ:そう、コネクション。すごーく結びづらいなあとずっと思ってて……。
GM:何せ対象が個人じゃなくて一国ですからね。難しいようでしたら、任意の感情を決めてもらっても構いません。
セラ:取引・腐れ縁・友人……
GM:一応推奨はあこがれ(いい国だなー)、庇護(この国は私が守る!)、腐れ縁(トラブルばっかだなー)などです。
ワッカ:支配(治めたいなぁ~)
GM:家族(祖国)とかもありかもしれませんがキャラ的にはないですよねははは。
ワッカ:家族?
セラ:うん、友人にする。いっぱい友人がいる国。
ワッカ:わ、なんかいいこと言ってる。
GM:……いいじゃないですか。セラさんのくせに。
ワッカ:セラのくせに!
GM:いけない、ワッカとシンクロしつつある
セラ:∴ 妖精=GM
GM:やめて!……こほん。
アールゥ:邪妖精2人……
レンハ:ワッカは結局セラ君のファミリアなのかね
ワッカ:それ、新しい
セラ:それはちょっと……
ワッカ:このぉ、ツンデレさんめぇ~!
ワッカ:姫様には他にどんなコネ持てますか?
GM:あこがれ、庇護、後援者、恩人……好意的なものなら比較的なんでもいけるんじゃないでしょうか。
ワッカ:「あこがれ」で。
GM:ちょっとひねったのだと、姉と慕うので「家族」、共にこの国を思う「同志」とかもありますね。
ワッカ:家族もいいですね。「家族」で。
GM:はーい。
ワッカ:流されやすい水妖精
GM:実際はどっちが年上か分かったもんじゃないですが
GM:では、シーンを変更しましょう。
○オープニング・シーン3(マスターシーン)
名もなき古の神殿――グラスウェルズ最大にして最古の神殿とされるその場所は、神殿組織により機密事項とされ、王家の者しか知らないと言われている。
その深奥へと続く長い回廊を、神官たちに連れられて、クリスティアナ・グラスウェルズは歩いていた。
台に載せて捧げ持った“王威の竜輝石”を見つめながら、彼女は自らの手で討った先王に思いを馳せる。
彼も王の石を手に、この回廊を歩いたのだろう。神官たちの見守る中、アインの加護を授かって、国王としての覚悟を決めたのだろう。
――その彼が、どうしてああなった?
統一帝への野心? ……過去にもそれを望んだ王は大勢いたが、彼らが皆非道の王であれば、この国はとうに滅んでいただろう。
純白竜の導き? ……この国の興りから五百年あまり、アインが姿を現わしたことはない。王家の者として恥ずべき考えだが、加護の実在すら怪しい。
そうだとすれば、一体――
周囲の神官たちが立ち止まる。それに合わせて足を止め、顔を上げると……そこにあったのは、巨大な純白竜の石像だった。
王都の白竜神殿にある大きな石像ですら、目の前のものに比べればまるでチェスの駒だ。あるいは、本物の純白竜と変わらぬ大きさなのかもしれない。
その姿を見上げるあまり、気づくのが遅れた。……石像の前に、男が立っている。
神官には見えない。黒い外套の下には明らかに剣を吊っているし、周囲の神官たちも戸惑っている。
まして、アインの使いにも見えない。暗灰色の髪はさておき、青い瞳の奥には、神聖な場に相応しくない、暗い欲望が燃えている。
神官の一人に預けておいた二本の細剣を抜き放ち、クリスティアナは問うた。何者だ、と。
外套の前を開き、腰の両側に吊った二本の長剣に触れながら、男は答えた。
――単なる死神さ、と。
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